営業部チーフ奥中
業界20年目。お客さまとの商談はもちろん、素材探しからサンプル作製、海外工場への指導・検品まで幅広く動き回ります。
商品部 サンプルルーム向井
営業との打合せを基に、型紙からサンプルバッグを作り上げる。海外工場とのCADデータの共有・修正も行います。
商品部 生産計画チーフ新垣
営業・サンプルルームとの打合せから、生産計画を取り仕切る。サンプルをはじめ、海外工場にも関わります。
奥中
弊社の営業担当者は、お客様がお持ちの商品アイデアをお聞きして、その情報をサンプルチームに伝え、サンプル品を作ってもらう流れになっています。サンプル品も、製品と制作工程は同じですよね。
向井
サンプルチームは、営業担当者からの情報をもとに型紙づくりから始めて、組み立てまで一貫して行います。しっかりアイデアを固めて持ってきてくれるのは、サンプルチームとしては仕事に入りやすいですね。
奥中
そのサンプル品も、ご納得いただけるまで何度も修正をすることもありますしね。ご納得いただければ、いよいよ生産に入るわけですが、国内と海外それぞれで工程が違いますよね。
新垣
国内生産では、本社の商品部で材料の発注や裁断など生産に必要な準備を行います。使用する材料によっては、専門の職人に裁断をお願いすることもありますよ。それら準備が終われば生産開始です。海外工場では、各工場にいる生産担当者が材料の発注から対応します。製品によっては、国内と海外の両方の工場を稼働させることもあります。
奥中
海外工場で生産する場合は、現地の生産担当者とテレビ会議もしますよね。
新垣
進捗状況や品質確認のために頻繁にやりとりしますね。新商品の場合は、実際にバッグを本社に送ってもらい、実物を確認します。
奥中
弊社は完全分業制ではないため、私を含め営業担当者一人ひとりに、鞄づくりにおける一通りの知識があります。お打ち合わせでお客様から疑問があってもその場で即答できるため、サンプル師が同行しないことのほうが多いですね。
向井
サンプルチームの私としては、自分の仕事に集中できるので助かっています。サンプル品を作るにしても、手仕事としての鞄づくりの技術と知識を求められるので。私は入社して2年になりますが、職人である師匠から学ぶことがまだまだありますから。
新垣
鞄は、さまざまなパーツが組み合わさった複雑な製品なうえに、いろいろなバリエーションがありますからね。知らなければ、展開図も描けないですし。
向井
師匠の教えと、営業担当者のヒアリング精度の高さが、サンプル品を作るスピード感と品質の高さにつながっているのだと思います。
新垣
生産工程でも、サンプル品や型紙の型の質は、製品の仕上がりに影響します。国内でも海外でも生産では、サンプル品をもとに作られた型紙から裁断された材料で、各工場にいる職人が本社の職人から継承された技術で一つひとつ縫製していますからね。
奥中
営業担当者に限らず、みんな、鞄づくりの工程を理解していますよね。お互いの仕事への理解があるからこそ、円滑に業務が進んでいるのだろうと思います。
向井
これまでの型紙づくりでは、職人が一つひとつ型紙を起こす作業をしていましたが、2020年にCADが導入されて以降、CADで型紙データを作ることも増えてきました。現時点では手作業で型紙を作るのと半々くらいの割合ですが。
新垣
データは便利ですよね。ほぼリアルタイムで工場に型紙を届けられるし、管理もパソコン上でできるから劣化の心配がない。海外生産においていえば、今後さらに紙ベースの型紙を空輸するというタイムロスも削減できるのではないかと思います。
向井
商品によっては、一型の型紙づくりで時間がかかることもありましたからね。CAD導入のメリットでいえば、型紙のほかにも、タガネ(抜き型)に対しても感じていますよ。少量ロットのものや繊細な形状のものでは、CADデータから直接裁断することで代替が可能になったんです。
新垣
細やかな形状をタガネで表現するのは難しいですからね。それは、CADと自動裁断機があるからこそできることかもしれませんね。
奥中
営業担当者としての肌感ですが、CAD導入で、サンプル品のみならず、製品までの仕上がりスピードや品質も向上していると感じています。お客様からもたびたび「出来上がりが早いね」とお褒めの言葉をいただいているんですよ。
新垣
納品までスピード感を持って行える体制が全社的に整いつつありますね。
向井
弊社には古くからおつきあいのあるお客様も多く、何年も前の製品が再発注されることもよくあります。現在は、職人が過去に作成した紙の型紙を再利用していますが、ゆくゆくはすべてデータ化する計画です。そうすれば、再発注やデザイン変更にも迅速に対応できるようになるのではないかと思うのです。
奥中
たしかに、それはあるでしょうね。それに、より正確な型紙から生産できるようになれば、出来あがってくる製品の品質にばらつきが一層出にくくなりますよね。
新垣
そうですね。ただ、CAD導入で効率性や生産性が上がっているとはいっても、やはり基本は手仕事。鞄づくりにおける基本的な技術が身についていなくては、ツールとしてのCADを活かしきれないと考えています。やはり、手仕事ができてこそのCADだと思います。